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ロタ便り 『雲の心』

10:18:23 2004-06-28
「ああ、僕は今日から子供達の信頼を失い、大うそつきのレッテルを貼られるのか」毎年、七夕が近づくたびに15年前の「あの出来事」を思い出します。
そのころ、僕は小学生を相手に「日本語教室」を開いていました。教えることといえば「おはよう」「こんにちは」から始まる
「小学一年生の国語」といったところですが、会話だけでなく折り紙なども教材に使って、
「だまし舟」や「鶴」など折ってましたから、
子供たちも楽しいらしく、毎回「わいわいがやがや」と賑わっていました。

折り鶴はアメリカ人にもすごく喜ばれ、
レストランで小さな折り鶴を「箸おき」がわりにすると、
みな大切に持ち帰ったものです。

七夕が近づくある日、子供たちにこんな話をきかせました。

天の川の岸辺に、「ベガ」という名の
美しい布を織る働き者の娘がいました。
働くばかりで他に興味を示さない娘を心配した父親の天帝が考えた末、
向こう岸に住む「アルタイル」という、
これまた働き者の牛飼いと一緒にさせました。

二人はとても気が合いしばらくは働きながら楽しく暮らしていましたが、
やがて怠惰になり毎日仕事もしないで遊んでばかりいるようになりました。
何度も注意した天帝もやがて堪忍袋の緒が切れて二人を川の両岸に引き離し、
一年に一度、7月7日だけ逢うことを許しました。

日本では、自分の願い事をかいた五色の短冊を笹竹に飾り、
お供え物をそえて天に願うのです。
「来週は七夕パーティーをしましょう。」

さて当日。所用でグアムから帰ると、
プールサイドにはたくさんの子供たちが集まっていました。
それぞれの願いを「英語」でかいた短冊を笹竹につるし、
「世紀の天体ショー」をいまや遅しと待っていたのです。

どうやら子供たちは僕の話を
「ベガがアルタイルに逢いに天の川を動いて渡る」
と受け取ったようでした。

さあどうしよう。
いまさら「あれは神話の話だ」とはとてもいえません。
子供たちは次々と集まってきます。

日が暮れました。
「万事休す」と諦めたとき、天の使者があらわれたのです。
「ああ、雲よありがとう。」心の中で叫びました。

今は思うのです。
雲が助けたのは、「僕の面目」ではなく「純粋な子供の心」だったんだと。

あれから15年経ちました。
警官になった子、イミグレーションや税関で働く子、お嫁に行った子。
みんなロタで生まれて、老いてゆくんだけど、
小さな島には「おもいで」がいっぱい詰まっています。

[ロタココナツビレッジ 稲葉正憲]
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ロタココナツビレッジのロタ便り


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